多種化学物質過敏症:1999年合意事項(全文)
Mail Magazine ME/CFS Information, No.32 and No.36
2002.6.30, 2002.7.28
Multiple Chemical Sensitivity: A 1999 Consensus
Archives of Environmental Health, Vol.54, No.3,
pp.147/149.
http://heldref.org/html/Consensus.html
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●概要
多種化学物質過敏症(MCS)の定義に関する合意基準は、MCSについて豊富な経験と幅広い視点を持つ医師と研究者89名による1989年の学際調査において初めて合意されました。
それから10年経った現在、合意基準の中心となる5項目(すなわちMCSを[4]関連性のない[3]複数の微量化学物質の曝露に反応し、[2]再現性を持って起こり、[5]原因物質が除去されると症状が改善又は治癒する[1]慢性状態として定義しました)について論文などで反論は見られていません。
我々が現在追加を提案している6番目の基準(症状が複数の器官系で起こることを必要とする)を加えたこれらの基準は全て、これまで用いられてきている種々のMCSの研究基準に共通しているものです。それにも関わらず、これらの臨床への標準的な使用は、不十分で、大きく遅れています。特にアメリカ、イギリス、カナダ政府による調査により、湾岸戦争従軍者は非従軍者に比べて、化学物質過敏症が2〜4倍多く見られることが明らかとなっていることから、合意基準の臨床への標準使用は大変重要であると考えられます。
さらに、ニューメキシコ州とカリフォルニア州保険所が行った住民調査によると、それぞれニューメキシコ州で2%、カリフォルニア州で6%の方々がMCSと診断を受けており、両州の16%の方々が日常の化学物質に対する「異常な過敏性」があることがわかりました。
「MCSの病訴を精神的なものとして退けるべきではなく、十分な精密検査が必要である」とした1994年の米肺協会、米医師会、米環境保護局、米消費者製品安全委員会による合意事項に加え、この高い有病率が得られたことから、他の疾患が存在する場合でも、前述の合意基準6項目を満たし、他の器質的疾患(例えば、肥満細胞症)では化学物質への曝露による全ての徴候と症状を説明できない場合には、MCSと正式に診断を行うことを提案します。
患者の徴候や症状の病理に関する研究が進められていますが、化学物質過敏症を患う数百万人の市民と数万人の湾岸戦争従軍者達には、これ以上診断の標準化を待っている時間はありません。
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●多種化学物質過敏症:1999年合意事項
化学物質過敏症の研究、評価、診断、または成人/子供の治療に携わる研究者、医師として、湾岸戦争における化学物質曝露による健康被害に関する国立衛生研究所アトランタ会議(1999年)で示された目標「多種化学物質に曝された湾岸戦争従軍者にみられる特徴を明らかにし、一般市民における多種化学物質過敏症(MCS)とその関連疾患で見られる特徴との関係を検討する」[1]を支持しています。
州と連邦政府機関によって行われた調査によると、MCSは一般に最も多く診断が行われている慢性疾患の一つであり、またアメリカの湾岸戦争従軍者に最も多く見られる疾患でもあります(いまだ診断が確定していない場合が多い)。
1995年と1996年にカリフォルニア州保険局、1997年にニューメキシコ州保険局により実施された、無作為抽出による電話調査の結果、カリフォルニア州の成人のうち6%[2]、ニューメキシコ州の成人のうち2%[3]の方々がMCSまたは環境病と診断を受けており、両州の16%の方々が「日常の化学物質に対する過敏性(unusually
sensitive)」を示していることがわかりました。
そのほかの州の成人に対するで無作為抽出調査では、(著しく敏感ですか?(especially
sensitive)と聞くかわりに)「過敏だと思いますか?(unusually
sensitive)」と質問したところ、1/3がそうであると答えています[4-6]。
湾岸戦争時代に軍に所属していた方々を対象に1998年に復員軍人援護局(VA)が行った最大の無作為抽出調査に基づくデータ(湾岸戦争従軍者11216名と非従軍者9761名からのアンケート結果)によると、非従軍者では5%、従軍者では15%の方々が化学物質過敏症を訴えていました[7]。
また、そのほかの調査ではさらに高い数値が得られています(しかし従軍者と非従軍者の違いは同様に3倍となっています)。上記の調査に比べて規模は小さいのですが、VA病院外来患者に対して無作為抽出調査を行った結果、湾岸戦争従軍者の86%、非従軍者の30%の方々が化学物質過敏症を訴えていました[8]。
VA登録簿から無作為抽出された方々を対象に、MCSの評価を目的として行われた唯一の研究では、対象者1004名のうち36%の方々がMCSの一般的な研究基準を満たしていました[9]。
疫病管理予防センターによって実施された、国防総省(DOD)在職中の職員から無作為抽出による、さらに規模の大きい2つの調査の結果では、湾岸戦争従軍者は非従軍者に比べ、自己診断による化学物質過敏症の有病率は、2.1倍、2.5倍と僅かに低いものの、依然顕著に大きい値を示しました。
アイオワ州の調査では「MCSの可能性」を評価するために詳細なアンケートが用いられ、従軍者と非従軍者の有病率はそれぞれ5.4%、2.6%でした[10]。
ペンシルベニア州の調査[11]では、化学物質過敏症に関して一問だけYes/No形式の質問がなされ、従軍者と非従軍者の有病率はそれぞれ5%、2%でした。
カナダの湾岸戦争従軍者のMCS有病率(2.4%)は、(アメリカでの調査結果の)約半分でしたが、それでもなおカナダの非従軍者と比べて4倍となっています[12]。
MCSがほとんど知られていない英国でさえ、湾岸戦争従軍者は非従軍者に比べて、2.5倍の方がMCSと診断されているとの報告があります[13]。
したがって、VA、DOD、その他の医師達がMCSの評価に用いることができるような標準的な臨床基準と包括的な臨床プロトコルが必要であることは明らかです。
関係者とアトランタ会議の後援団体(保健社会福祉省、公衆衛生総局、疫病管理予防センター、国立保健研究所、毒物・疫病登録局)に対し、MCSについて豊富な経験と原因に対する幅広い視点を持つ医師と研究者89名によって合意された1989年の合意基準の中心5項目に基づいた公式なMCS臨床定義を作成することをわれわれは提案します[14]。われわれ89名の内訳は、アレルギー専門家36名、職業病専門家23名、臨床環境学専門家20名、内科・耳鼻咽喉科専門家10名です。また、われわれは、これらの5項目の基準を満たす可能性のある単一器官系疾患(喘息や偏頭痛等)とMCSを区別するため、「化学物質への曝露により症状が複数の器官系で起こる」という項目の追加を検討しています。
●MCS合意基準
以下に示すMCS診断の合意事項は、Nethercottらによるものです[14]。(研究の一部は、アメリカ国立労働安全衛生研究所(NIOSH)とアメリカ国立環境衛生研究所(NIEHS)からの助成によるものです)
○化学物質に(繰り返し)曝された場合、症状が再現性をもって現れる
○慢性的である
○過去に経験した曝露や一般的には耐えられる曝露よりも低い濃度に対して反応を示す
○原因物質を除去することによって、症状が改善または軽快する
○関連性のない多種類の化学物質に対して反応が生じる
○症状が多種類の器官にわたる(1999年追加)
現在までに公表されている唯一のMCSに関する合意、すなわち「MCSの病訴を精神的なものとして退けるべきでなく、十分な精密検査が必要である(ALA1994)」とした1994年の米肺協会、米医師会、米環境保護局、米消費者製品安全委員会による報告書をふまえ、喘息、アレルギー、偏頭痛、慢性疲労症候群(CFS)、線維筋痛症(FM)等、他の疾患を持つ場合でも、合意基準6項目を全て満たす場合には、MCSと診断することをわれわれは提案します。
全ての徴候や症状、化学物質の暴露との関連の両方が多器官障害(肥満細胞症やポルフィリン症等)によって説明できる場合にのみMCSを除外すべきであり、化学物質の暴露との関連が明確でないCFSやFMなどを理由としてMCSを除外すべきではありません。
また、MCS診断の経験が少ない医師をサポートするため、スクリーニングや化学物質過敏症の特徴を捉えるのに有効な問診表[15,16]、MCSの診断にあたって考慮されるべき重複疾患のリスト、査読文献に報告されているMCSの徴候と検査における異常のリスト(AshfordとMiller[17]、Donnay[18]により作成されたもの)を臨床プロトコルに含めることを提案します。
現時点ではMCSと診断できる単一の検査法はありませんが、徴候や症状、医療記録などから得られる情報は、本疾患の治療や経過を捉えるのに役立つでしょう。
MCSの病態は、個人差が大きく、また時間の経過によって大きく異なることがあります。毎日深刻な症状が続き寝たきりになってしまう方もいる一方で、例えば、中程度の症状がたまに現れるだけで生活への影響は最小限にとどまっている方もいます。
そのため、全てのMCSの臨床診断は、生活への影響・障害の度合い(例:少ない、部分的、完全に)、症状の重さ(例:軽度、中度、重度)、症状の頻度(例:毎日、週に一度、月に一度)、感覚の寄与(嗅覚、三叉神経、味覚、聴覚、視覚、触覚(振動の認識、痛覚、温覚を含む)のうち、どの感覚経路が通常の刺激に対する過敏性や耐性を変化(+/−)させているのか、またそれが慢性的なものなのか、化学物質の暴露を受けた時々に反応しているのかを特定する)などの定量的・定性的な指標を用いて特徴づけがなされ、その経過を見る必要があります。
研究には高い同質性が要求されるため、このMCS合意基準と共に、仮説を検証するのに必要だと考えられる場合には、あらゆる追加・除外基準を積極的に設定して行くことを提案します。また、研究結果の相互比較やより広範な適用性を評価するため、MCS研究のための症例とコントロール両者の特徴づけとそれらの選択に用いられた指標と定義域を全て明示する必要があります。
多くのMCS患者でCFSとFMの重複が見られていることから、これらの疾患の関連を明らかにする必要があります[19-21]。CFS、FM、またはMCSのヒト研究に対する連邦政府機関による全ての「研究公募」と「RFA」において、3つの疾患全てに対するスクリーニング(それらの選択基準がどうであれ、それを変える必要はないが)とその結果を明示するよう方向付けを行うことが必要です。既に、アメリカ関節炎筋骨格疾患研究所では、線維筋痛症の研究において顎関節症のスクリーニングと重複に関する報告を義務づけているという先例があります。
CFS、FM、MCSに関する研究は、いずれもさらに大規模な共同研究を行うことで有益な結果が得られると考えられます。従って、DOD1999年度湾岸戦争疾患研究予算300万ドルをCFSーFMーMCS共同研究へ割り当てるというRom
Harkin上院議員による連邦議会への発議(請願074&&&-9902-0005
2/12/99発行)を、これら3つの疾患の重複と相違についての更なる解明を進めるものとしてわれわれは歓迎しています。CFS、FM、MCS研究に資金を提供している全ての連邦政府関連機関は、このような3方向からの研究を取り上げて行くことが必要です。
翻訳:Co-Cure-Japan, M.K.
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※このページは、Co-Cure-Japan http://www.co-cure.org/jp/ より許可を得て転載しています。
■Co-Cure-JapanのHP内の「多種化学物質過敏症:1999年合意事項(全文)」:
http://co-cure.org/jp-care/mm/mm32.htm
■英語の原文サイト:http://www.eurekalert.org/pub_releases/1999-07/HP-MCSA-010799.php
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